宇和島のやわ麺とだしは口福の味 あの鮨職人がうどん店を開いたワケ【不動前】

2018年05月13日
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宇和島のやわ麺とだしは口福の味 あの鮨職人がうどん店を開いたワケ【不動前】
Summary
1. 目黒不動尊近くに“宇和島うどん”の店『らんまる』が新規開店
2. 名物は愛媛・宇和島の名物“じゃこ天”を乗せた郷土うどん
3. 『鮨 りんだ』の姉妹店だからこそ! 鮨や和食も楽しめる

うどん屋らしからぬ造りには秘密が

東急目黒線目黒駅からひとつ先の静かな街、不動前。
近隣エリアである中目黒の華やぎや五反田の喧騒はないが、街を象徴する桜並木から脇道に入れば、小体ながら常連客に愛される佳店がぽつり、またぽつり――そんな慎ましくも温かみのある街だ。

2月1日、目黒不動尊(瀧泉寺)の入り口付近にオープンした『らんまる』は、愛媛は宇和島のうどんと一品料理の店。だが、その造りは“うどん店”としては少々変わっている。

すっきりとした白木のカウンターの向こうには、小ぶりではあるが鮨店のつけ場を思わせる板場に、海苔用の焼き台、おひつまで。すっきりと頭を丸め、楚々とした所作で板場に立つ店長・山代峻史さん(写真上)の姿が凛々しい。

そのときふと、鼻腔がだしの香りに溶け込んだ酢の存在をとらえた。実は同店、ここから徒歩5分ほどの『鮨 りんだ』(以下、『りんだ』)の姉妹店として誕生した。うどん以外の一品料理には『りんだ』で仕事が施された種が使われ、板場に立つのも『りんだ』で修業を積んだ若手だという。

「お客さまの前に立ってこそ学べるものがある」弟子たちへの思い

同店が謳う“宇和島うどん”とは、オーナー・河野勇太さん(写真下)の地元、愛媛は宇和島で親しまれるうどんを理想とした、いわば郷愁の味だという。『りんだ』でも宇和島のタコや鯛を使うなど、郷土へ強い思いを持つ河野さんだが、姉妹店に対してはこんな思いもある。

「ここは『りんだ』の若手が活躍するための場でもあるんです」と、河野さん。
「若い職人は裏方が多く、お客さまの前に立つにはかなりの時間がかかります。独立を目指す子たちにとって、こうしてカウンターに立つ経験はいずれ役に立つはずです」。

自分の下にいる若手を応援したい――。故郷・愛媛への愛情と同じく、弟子たちに向けられる思いも温かい。『らんまる』は、そんな河野さんの思いが帰結した店なのである。

故郷・宇和島の郷土食“じゃこ天”が乗る自慢のうどん

看板に据えるのは「宇和島じゃこ天うどん」(写真上)。“じゃこ天”とは、魚のすり身を揚げたもので、宇和島を含む南予地方の特産品である。

地元から取り寄せるじゃこ天は、香ばしく、ぷりぷりと弾むような食感も楽しく、なんといっても魚本来のうまみがとてつもなく濃い! これだけでも酒呑み歓喜のアテになるほどで、もう一口、もう一口と止まらなくなる。

調和の取れただしもお見事。3種類のカツオ節と羅臼昆布、伊吹イリコ、椎茸と使う素材は多いが、“洗練”という枠の中で味わいが重なり、しみじみと舌に染みわたる。柚子やすだち、薬味もさりげないアクセントとなっている。
特注のうどんはお隣、香川のそれと比べると細く柔らかく、だしなじみの良さが宇和島流。

暑い季節は、シソやオクラ、とろろなど15種類の具材が盛り付けられた「薬味ぶっかけ」が同店の定番となりそうだ。つゆを回しかけたら、すだちを搾り、豪快に混ぜ合わせるべし。シソ、青のり、カツオ節……それぞれの香りが花開き、変化する味わいにハマってしまう。

うどんの他、鮨やおつまみも味わえるコースもスタート

4月からは、季節のおつまみ5品+うどん+握りからなる「おまかせコース」が登場。たとえば春のある日は、色の取り合わせが美しいこんな一皿が待っている。

ハマグリの殻を皿に見立てた「ホタルイカと菜の花と空豆の土佐酢ジュレがけ」(写真上)。ホタルイカの滋味深いワタ、空豆の青々しい風味、菜の花のほろ苦い余韻……今、おいしさの頂にある食材たちが、けれんのないあり方で旬を伝えてくれる。

握り2貫では、この日はマグロの漬けとコハダ、対照的な種が供された。ねっとりと心地いい漬けは、狙いすましたような強い味わいが印象的。一方軽く〆たコハダは、口の中の味蕾(みらい)が一瞬すぼまった後、うまみの余韻が優しく続く。これら種のうまさを最大限に引き出す赤酢の効かせ具合もまた絶妙だ。

「ここでは『りんだ』でできないことをやりたいんです。たとえば夏は細いうどんで“冷やし中華うどん”とか(笑)」と話す河野さんのワクワク感がこちらにも伝わってくる。静かな街、不動前に通いたい店がまた一つ増えてしまった。


【メニュー】
宇和島じゃこ天うどん 900円
薬味ぶっかけ(温玉付き) 1,000円
本日のお刺身 1,800円
すし屋のだし巻き卵 800円
おまかせコース 6,500円
※価格はすべて税別

らんまる

住所
〒153-0064 東京都目黒区下目黒3-16-2 1F
電話番号
03-5734-1461
営業時間
11:00~13:30、17:30~21:30
定休日
火曜、第3月曜
公式サイト
https://www.facebook.com/%E3%82%89%E3%82%93%E3%81%BE%E3%82%8B-180128246073772/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。